クライバー、チェリビダッケ、バーンスタイン (河出文庫)

クライバー、チェリビダッケ、バーンスタイン (河出文庫) の詳細

個性際立つ三人の指揮者の演奏を論じる。クライバーは超快速なテンポでベートーベンを振った。5・6・7番の演奏を聴いたが、あまりの超快速な演奏に圧倒された。ウィーンフィルとの7番が最も良かった。永遠の名盤である。チェリビダッケはミュンヘンフィルとブルックナーの交響曲を演奏した。クライバーとは正反対に最も遅いテンポで演奏した。神々しいまでの遅さについていくのは容易ではないが、反対に好みの楽章のみを部分的に楽しむ音楽の楽しみ方があることをチェリビダッケから教わった。どこまでも平坦でなだらかなブルックナーであり、至福の楽興の一時を楽しめる。メゾフォルテをどこまでも持続するのは不可能なので、平坦になるのはやむを得ない。この演奏時間の長さはミュンヘンのブルックナーであり、愛好家には至福の時である。こんなに長く演奏を楽しめるのだから。バーンスタインは、ベートーベンの第９を聴いた。ニューヨークフィルとウィーンフィル、最後はベルリンの壁崩壊後の記念コンサート盤で聴いた。機能主義から叙情主義への転換が聴き取れた。ブラームスの第4盤とグールドと共演したピアノ協奏曲第1番が面白い。マーラーも絶品だ。ブルックナーは第９番以外録音はしなかった。吉田秀和氏の評論は演奏家・指揮者論である。その点で主に作曲家を論じた小林秀雄とは異なる。レコードやCDが普及した現代だからこそ、吉田秀和氏の演奏家・指揮者論も面白さが増すことになる。クラシック音楽の場合、聴衆は、同一の作曲家の曲を様々な異なる演奏家の演奏で聴き比べる楽しみ方が出来たからだ。というか、プロやアマチュアの演奏家以外の素人の聴衆にとって、聴き比べ（演奏を聴く）しか楽しみがないからだ（笑い）。そういう意味において、吉田秀和氏の演奏家論が時代を先取りしていたことは間違いない。吉田秀和氏と宇野功芳氏は音楽評論家の双璧である。名盤探しに役立つこ間違いなしだ。お勧めの一冊だ。