大便革命 腐敗から発酵へ (幻冬舎新書)

大便革命 腐敗から発酵へ (幻冬舎新書) の詳細

ここ数年、腸と病気の関連や、腸内細菌のバランスを整えることの重要性について書かれた本の出版が相次いでいる。本書も腸内細菌の研究者である著者によるそれらをテーマとした1冊であるが、特徴と思われる点がいくつかある。一つは、書名にもあるように「大便」について関心を持つことの重要性を繰り返し強調していることである。確かに現代人は、便通がどの程度あるかということに関心が低くなっているし、洋式便所の定着で便を注意して観察するということなどほとんどの人は行っていないと思われる。しかし健康を保ち、また長寿を目指すのであれば、健康な便を毎日出すことはとても大切であることが本書では様々な実例を挙げながら説明されている。著者曰く、大便は「ラブレター・フロム・カラダ」なのだそうである。二つ目は、腸内細菌について取り上げた本では善玉菌の定番とされる乳酸菌やビフィズス菌に加え、著者が「長寿菌」と呼ぶ酪酸産生菌を増やすことが大切で、そのためには食物繊維を多く摂ることが重要であることについて詳しく説明していることである。実際に長寿者の多い地域では、食物繊維が豊富な野菜や海藻等を豊富に摂っていることが分かっている。また酪酸産生菌が作る酪酸が腸内環境を整えるメカニズムについても研究成果を踏まえて分かりやすく説明してあり説得力があると感じられた。腸内細菌のバランスは、生活習慣、特に食事によって容易に変わりうるという事実も、健康や長寿のために日々の食習慣を見直そうというモチベーションになる。食物繊維を含む食品の中でもどれを摂るのが一番良いかは人によって異なるようだが、一定期間試してどうなるかが排便回数や便の状態をみることで確認できるのも行動を変えるのに役立つだろう。「大便革命」とは刺激的な書名であるが、「おわりに」で著者はその意図を、「大便に対する考え方を変えて、自分の健康のありようをみていく」、「そのような意識改革」を望んで付けたと説明している。健康や長寿を望む大多数の人にお薦めの本だが、少なくとも国民病と言われる便秘に悩む人にとっては、薬やサプリメントなどに頼らず食事によって状態を改善していくためにすぐに実践できるヒントが載せられており有用な本であると思われる。